信書に該当する文書に関する指針
1 目的
この指針は、民間事業者による信書の送達事業の許可制度を実施するに当たり、許可を要する民間事業者の範囲を明らかにするために、郵便法(昭和22年法律第165号)第4条第2項及び民間事業者による信書の送達に関する法律(平成14年法律第99号) 第2条第1項に規定された信書の定義に基づき、信書の考え方を明らかにするとともに、信書に該当する文書を分かりやすく示すことを目的とする。
2 基本的な考え方
(1)信書の送達は、国民の基本的通信手段であり、その役務を全国あまねく公平に提供する必要がある。また、信書の送達に当たっては、日本国憲法第21条第2項で保障するところにより信書の秘密が確保されなければならない。このようなことから、郵便法及び民間事業者による信書の送達に関する法律においては取扱中に係る信書の秘密は侵してはならない等の規定を設け、信書の送達を保護しているものである。
(2)「信書」とは、「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」と定義されている。
ア)「特定の受取人」とは、差出人がその意思の表示又は事実の通知を受ける者として特に定めた者のことである。文書自体に受取人が記載されている場合には、差出人が「特定の受取人」にあてたことが明らかであるが、その記載がないものであっても、受取人が記載されていない手紙文などのようにその内容から受取人が省かれていることが分かる場合には、包装に記載されたあて名によって受取人が具体的になることから、「特定の受取人」にあてたものとなる。 また、受取人は、民法上の自然人、法人に限定されるものでなく、法人格のない団体や 組合等も含まれ、一人であっても複数人であっても具体的に定まっていればよい。
イ)「意思を表示し、又は事実を通知する」とは、差出人の考えや思いを表し、又は現実に起
こり若しくは存在する事柄等の事実を伝えることである。
一般的に、個人がその意思を表示し、又は事実を通知する文書を特定の受取人に送付
する場合は、その文書が信書に該当することは明らかであるが、同一内容で大量に作成
された文書を個々の受取人に対して送付する場合であっても、内容となる文書が特定の
受取人に対して意思を表示し、又は事実を通知するものであれば、信書に該当する。
ウ)「文書」とは、文字、記号、符号等人の知覚によって認識することができる情報が記載さ れた紙その他の有体物のことである。文書の記載手段は、筆書に限られず、印章、タイプライター、印刷機、コピー機、プリンタ ー等によるものでもよく、また、文書を記載する素材は、紙のほか木片、プラスチック、ビニール等有体物であればよい。なお、電磁的に記録されたフロッピーディスク、コンパクトディスク等は、そこに記載された情報が、人の知覚によって認識することができないものであるので、これらを送付しても郵便法第4条第2項に規定する信書の送達には該当しない。
3 信書に該当する文書の例
(1)書状
書状は、考えや用件などの意思を表示し、又は事実を通知する文書であるので、差出人から特定の受取人にその内容を伝えるために送付する場合は、信書に該当する。
(2) 請求書の類
請求書は、代金を請求するという意思を表示し、又は事実を通知する文書であるので、差出人から特定の受取人にその内容を伝えるために送付する場合は、信書に該当する。
(類例)納品書、領収書、見積書、願書、申込書、申請書、申告書、依頼書、
契約書、照会書、回答書、承諾書
(3) 会議招集通知の類
会議招集通知は、会議への出席を要請するという意思を表示し、又は事実を通知する文書であるので、差出人から特定の受取人にその内容を伝えるために送付する場合は、信書に該当する。
(類例)結婚式等の招待状、業務を報告する文書
(4) 許可書の類
許可書は、許可するという意思を表示し、又は事実を通知する文書であるので、差出人
から特定の受取人にその内容を伝えるために送付する場合は、信書に該当する。
(類例)免許証、認定書、表彰状
(5) 証明書の類
証明書は、ある事項が真実であることや間違いがないことの事実を通知し、又は意思を表示する文書であるので、差出人から特定の受取人にその内容を伝えるために送付する場合は、信書に該当する。
(類例)印鑑証明書、納税証明書、戸籍謄本、住民票の写し
(6) ダイレクトメール
ア) 商品などの広告を内容として同一内容の文書を多数の受取人にあてて差し出す形態を
とるいわゆるダイレクトメールについては、その差出人が特定の受取人を選別し、その者
に対して商品の購入等を勧誘する文書を送付する場合には、一般的に特定の受取人に
対して意思を表示し、又は事実を通知する文書となるので、信書に該当する。
具体的には、文書自体に個々の受取人が記載されている場合、その記載がない場合で
あっても、商品の購入等利用関係があることを示す文言や契約関係等差出人との間に
おいて特定の関係にある者への意思の表示又は事実の通知である旨の文言その他の
差出人が特定の受取人に差し出す趣旨が明らかとなる文言が記載されている場合は、
信書に該当する。
イ) しかしながら、例えばその内容が公然あるいは公開たりうる事実のみであり、専ら街頭
における配布や新聞折り込みを前提として作成されるチラシのような場合、専ら店頭に
おける配布を前提として作成されるパンフレットやリーフレットのような場合には、それら
が差し出される場合にも特定の差出人に対して意思を表示し、又は事実を通知するという
実態を伴わないことから、信書には該当しない。
4 信書に該当しない文書の例
(1)書籍の類
書籍は、広く一般に対して発行されるものであることから、そこに記載された文書は、広く一般に対して意思を表示し、又は事実を知らせるものであり、特定の受取人に対するものではないので、信書には該当しない。
(類例)新聞、雑誌、会報、会誌、手帳、カレンダー、ポスター
(2)カタログ
ここにいう「カタログ」とは、必要なときに商品を選択して注文するためのもので、系統的に編さんされた商品
、申込方法、商品の広告等が印刷された商品紹介集(一般的には冊子としたもの)である。
カタログは、利用者一般に対して発行されるものであることから、そこに記載された文書は、広く一般に対して意思を表示し、又は事実を知らせるものであり、特定の受取人に対するものではないので、信書には該当しない。
(3)小切手の類
小切手は、流通性を有する証券であって、そこに記載された文書は、証券が流通する際に必要とされる事項を記載したものであり、特定の受取人に対して意思を表示し、又は事実を通知する文書ではないので、信書には該当しない。
(類例)手形、株券
(4)プリペイドカードの類
プリペイドカードは、金銭の支払手段として使用するために発行されるものであり、そこに記載された文書は、一般的にはそれを使用する際に必要となる注意事項であることから、特定の受取人に対して意思を表示し、又は事実を通知するものではないので、信書には該当しない。
(類例)商品券、図書券
(5)乗車券の類
乗車券は、鉄道やバスなどの交通機関に乗るために発行されるものであり、そこに記載された文書は、一般的には乗車する際に必要となる注意事項であることから、特定の受取人に対して意思を表示し、又は事実を通知するものではないので、信書には該当しない。
(類例)航空券、定期券、入場券
(6)クレジットカードの類
クレジットカードは、金銭の支払手段としての機能を有する物であるので、そこの記載文が物と密接に関連している場合には、信書には該当しない。
(類例)キャッシュカード、ローンカード
(7) 会員カードの類
会員カードは、会員であることを確認する等の機能を有する物であり、そこに記載された文書は、当該カードを使用する際に必要となる注意事項であることから、特定の受取人に対して意思を表示し、又は事実を通知するものではないので、信書には該当しない。
(類例)入会証、ポイントカード、マイレージカード
5 添え状・送り状
運送営業者、その代表者又はその代理人その他の従業者は、その運送方法により他人のために信書の送達をしてはならないが、貸物に送付する無封の添え状又は送り状は、この限りでないこととされている(郵便法第4条第3項)。
(1)この規定は、添え状・送り状が受取人や運送営業者にとって貸物の点検等を行う場合に有益な文書であり、貨物を送付する際に添付されることが必要と認められることから設けられたものである。したがって、添え状・送り状は、貨物という送付の主体があって、その送付に関する事項が記載された文書が従として添えられる場合に限られるものである。
(2)「添え状」とは、送付される貨物の目録や性質、使用方法等を説明する文書及び当該貨物の送付と密接に関連した次に掲げる簡単な通信文で当該貨物に従として添えられるもののことである。
ア) 貨物の送付に関して添えられるその処理に関する簡単な通信文
イ) 貨物の送付目的を示す簡単な通信文
ウ) 貨物の授受又は代金に関する簡単な通信文
エ) 貨物の送付に関して添えられるあいさつのための簡単な通信文
オ) その他貨物に従として添えられる簡単な通信文であって、上記アからエまでに掲げる事項に類するもの
(3)「送り状」とは、貨物を送付したことを通知する案内書のことであり、具体的には、送付される貨物の種類、重量、容積、荷造りの種類、個数、記号、代価、受取人並びに差出人の住所及び氏名等当該貨物の送付に関する事項が必要に応じて記載されたもののことである。
6 その他
本指針で掲げた信書に該当する文書等の例は、現状での具体的な事例を踏まえたものであるが、今後の信書の利用状況に応じて、これを見直し、新たな例の追加等を行うものとする。
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